外国ルーツの住民の防災対策とは?災害時に地域でできる支援と備えを解説
地震や台風、大雨、火事などの災害は、いつどこで起こるかわかりません。地域に外国ルーツの住民が暮らしている場合、災害時にどのように声をかけ、どのように支援すればよいのか迷う人もいるでしょう。外国人住民の中には、日本語の災害情報が理解しづらかったり、避難所の設置や日本の防災制度になじみがなかったりする人もいます。
大切なのは、「外国人だから困っているはず」と決めつけることではなく、同じ地域で暮らす住民として声をかけ合い、必要な情報を共有することです。
この記事では、外国ルーツの住民が災害時に直面しやすい課題や、各地で進められている防災の取り組み、地域でできる支援について解説します。
目次
外国ルーツの人との防災対策を地域で始めよう
日本は地震や台風、大雨などの自然災害が多い国です。近年は地域で暮らす外国ルーツの住民も増えており、災害時には言葉や文化、生活習慣の違いから必要な情報が届きにくい場合があります。だからこそ、防災は日本人だけで考えるものではなく、同じ地域に暮らす住民全員で取り組むことが大切です。
普段から顔の見える関係をつくり、避難場所や連絡方法を共有しておくことが、いざというときの安心につながります。
「誰も取り残さない防災」の重要性
災害時、外国ルーツの住民は次のような不安を抱えることがあります。
- 日本語で書かれた避難情報を読むのが難しい
- どこへ行けばよいか判断できない
- 周囲に助けを求めにくい
困っている理由は「外国人だから」ではなく、情報やつながりが不足しているためです。
「やさしい日本語」で声をかける、避難所まで一緒に向かう、防災訓練に誘うなど、地域でできる支援は身近にあります。先入観を持たず、同じ地域住民として助け合う意識が「誰も取り残さない防災」につながります。
災害時に外国ルーツの住民が直面しやすい課題

災害が起きたとき、外国ルーツの住民は日本人住民とは異なる困りごとに直面することがあります。
- 災害情報が理解しづらい
- 避難所や避難方法がわからない
- 日本の防災制度になじみがない
- 周囲に相談できる日本人住民がいない
- デマや誤情報による影響を受けやすい
ここでは、それらの直面しやすい課題について解説します。
災害情報が理解しづらい
地震や大雨、火事などが発生した際には、避難指示や警報、避難所の開設情報などが短時間で発信されます。しかし、外国ルーツの住民にとっては、日本語の専門用語や行政特有の表現が難しく、内容をすぐに理解できないことがあります。
「高齢者等避難」「緊急安全確保」といった言葉は、日本語に慣れている人でも判断に迷う場合があります。
避難所や避難方法がわからない
災害時にどこへ避難すればよいのか、どの道を通れば安全なのかを知らない外国ルーツの住民もいます。
日本に来て間もない人や、地域との接点が少ない人は、最寄りの避難所の位置や避難時に持ち出す物、避難所での受付方法などを把握していない場合があります。また、母国では避難所に行く習慣がない人もいるため、避難の必要性が伝わりにくいケースも考えられます。
日本の防災制度になじみがない
日本では自治体が防災情報を発信し、避難所を開設し、地域の自主防災組織や消防団などが協力して対応します。しかし、外国ルーツの住民の中には、こうした仕組みに触れる機会が少なく、災害時に行政や地域へ助けを求めてよいことを知らない人もいます。
避難所で水や食料が配られること、罹災証明書などの手続きがあることを知らない場合もあります。
周囲に相談できる日本人住民がいない
地域で暮らしていても、仕事や家庭の事情により近所付き合いが少なく、災害時に相談できる相手がいない外国ルーツの住民もいます。特に、言葉に不安がある人は、困っていても自分から助けを求めにくいことがあります。
普段からあいさつを交わしたり、地域行事や防災訓練に誘ったりするだけでも、顔の見える関係づくりにつながります。災害時の支援は、特別な知識がなくても始められます。「大丈夫ですか」「一緒に行きましょう」と声をかけられる関係が、命を守る力になります。
デマや誤情報による影響を受けやすい
災害時には、SNSや口コミを通じて不確かな情報が広がることがあります。外国ルーツの住民は、日本語の正確な情報にアクセスしにくい場合があり、母語のコミュニティ内で広まった誤情報を信じてしまうこともあります。
たとえば、避難所の場所や支援物資の配布、災害の被害状況について誤った情報が届くと、適切な行動が遅れるおそれがあります。地域では、自治体や消防、気象庁など信頼できる情報源を案内し、情報の確認を一緒に行うことが大切です。
外国人住民向けの防災で各地が取り組んでいること
外国人住民が安心して暮らせる地域づくりに向けて、各地の自治体や国際交流協会では、防災情報の伝え方や訓練のあり方を工夫しています。
ここでは、実際に行われている外国人住民向けの防災の取り組みについて紹介します。
多言語による防災情報の発信
災害時には、正確な情報を早く受け取ることが命を守る行動につながります。そのため各地では、英語、中国語、ベトナム語、ポルトガル語など、地域に暮らす外国人住民の言語に合わせて防災情報を発信する取り組みが進められています。
防災マップや避難所案内、災害時の行動をまとめたパンフレットを多言語化したり、自治体のホームページやSNS、防災アプリで多言語情報を届けたりする例があります。地域住民としても、外国ルーツの隣人が必要な情報にアクセスできているか気にかけることが、身近な支援になります。
「やさしい日本語」の活用
多言語対応は大切ですが、すべての言語にすぐ対応することは簡単ではありません。そこで各地で活用されているのが「やさしい日本語」です。
「やさしい日本語」とは、難しい言葉を避け、短く分かりやすい表現で伝える日本語のことです。
たとえば「避難してください」だけでなく、「危ないです。今すぐ安全な場所へ行ってください」と伝えると、意味が伝わりやすくなります。
災害時には、専門用語やあいまいな表現を避け、ゆっくり話す、紙に書く、絵や地図を使うなどの工夫も役立ちます。地域の誰もが使える支援方法として、やさしい日本語を普段から意識しておくことが大切です。
「やさしい日本語」については、以下の記事で詳しく紹介しています。
「やさしい日本語」ってなに?書き方や使い方を知って多文化共生に役立てよう
外国人向け防災訓練の実施
外国人住民が災害時に落ち着いて行動できるよう、自治体や地域の国際交流協会では、防災訓練や防災講座を実施しています。避難所の使い方や非常持ち出し品、災害時の声かけなどを実際に体験することで、知識だけでなく行動につなげやすくなります。
京丹波町国際交流協会では、外国人も日本人も一緒に体を動かしながら防災を学ぶ「みんなでぼうさい!防災運動会」を企画しました。こうした取り組みは、外国人に対する防災を難しいものとしてではなく、地域の交流のきっかけとして考えるうえでも役立ちます。
多言語対応の避難所運営
災害時に多くの人が集まる避難所では、外国人住民にも必要な情報が伝わるよう、多言語対応の工夫が求められます。
受付や掲示物では、多言語表示だけではなくピクトグラム(情報や注意を直感的に伝えるために作られた絵文字や絵記号)や地図を使って視覚的に表示することも効果的です。避難所においては食事や生活習慣、宗教上の配慮が必要になる場合もあるため、困りごとを相談しやすい雰囲気づくりも大切です。
ルーツを問わず、地域住民が「同じ避難者」として声をかけ合い、情報を共有することで、安心して過ごせる避難所運営につながります。
防災ハンドブックの配布
外国人住民に向けた防災では、平常時から情報を届けておくことが重要です。
全国各地では、地震や台風、大雨が起きたときの行動、避難所の場所、非常持ち出し品、緊急連絡先などをまとめた防災ハンドブックを多言語で配布する取り組みが行われています。冊子だけでなく、自治体のホームページからダウンロードできる資料や、スマートフォンで確認できる情報も役立ちます。ハンドブックを渡すだけで終わらせず、地域の防災訓練や日本語教室、交流会などで一緒に内容を確認することにより、実際の行動につなげやすくなります。
「やさしい日本語」が防災で注目される理由
「やさしい日本語」は、難しい言葉を平易な表現に言い換え、短くわかりやすく伝える日本語です。もともとは、阪神・淡路大震災で「避難」や「警報」といった言葉が理解できず、災害時に適切な行動をとりにくかった外国人住民への支援をきっかけに広がりました。
近年では、防災行政だけでなく、テレビの津波警報ニュースなどでも「つなみ!にげて!」のように、すぐ行動につながる表現が使われています。命に関わる場面では、正確さだけでなく「すぐ伝わること」が何より大切です。
今すぐできる!災害時に伝わりやすい言葉の工夫
災害時に伝わりやすくするには、難しい言葉を避け、短い文で、具体的に伝えることが大切です。たとえば「余震に注意」よりも「また揺れるかもしれません。上から落ちる物に気をつけてください」と言い換えると、行動がイメージしやすくなります。
漢字ばかりの案内はひらがなを添える、地図や絵を使う、身振りを入れてゆっくり話すことも効果的です。完璧な言い換えができなくても、相手に伝えようとする姿勢が支援の第一歩になります。
子どもや高齢者にとってもわかりやすい
やさしい日本語は、外国人住民だけのためのものではありません。子どもや高齢者、障がいのある人、日本語の文章を読むことが苦手な人にとっても、わかりやすい情報になります。
災害時は誰でも不安になり、普段なら理解できる情報でも頭に入りにくくなることがあります。そのような場面で、短く、はっきり、具体的に伝えることによって、みんなが安心できます。地域でやさしい日本語を意識することは、外国人支援にとどまらず、誰もが安全に行動できる防災体制づくりにもつながります。
災害時に外国ルーツの住民とどう接するべき?
災害時に外国ルーツの住民と接するときは、まず「外国人だから分からないはず」「助けが必要なはず」と決めつけないことが大切です。
日本語が話せる人、防災に詳しい人、地域で長く暮らしている人もいます。一方で、情報が届かず不安を感じている人もいるかもしれません。
大切なのは、相手を特別扱いするのではなく、同じ地域住民として自然に声をかけることです。「大丈夫ですか」「困っていることはありますか」と確認し、必要に応じて避難所や避難経路を一緒に確認しましょう。彼らに助けられることがあるかもしれません。災害時こそ、国籍や文化の違いを越えて助け合う意識が求められます。
平常時からできる外国ルーツの人との防災の取り組み

災害時に助け合える地域をつくるには、平常時からの関係づくりが欠かせません。
いざというときだけ声をかけようとしても、相手の状況や困りごとが分からず、支援につながりにくいことがあります。日頃からあいさつを交わしたり、地域行事に一緒に参加したりすることで、自然に相談しやすい関係が生まれます。
ここでは、日常生活の中で始められる、外国ルーツの人々との防災の取り組みについて紹介します。
地域の防災訓練に誘う
地域の防災訓練は、避難場所や避難の流れを確認できる大切な機会です。しかし、外国ルーツの住民の中には、訓練の案内に気づいていなかったり、内容が分からず参加をためらったりする人もいます。
近所の人が「一緒に行きませんか」と声をかけるだけでも、参加しやすくなります。訓練では、消火器の使い方や避難所の受付方法、非常持ち出し品などを実際に確認できます。地域住民が一緒に学ぶことで、災害時に自然に助け合える関係づくりにもつながります。
外国ルーツの住民と顔の見える関係をつくる
災害時に声をかけ合うためには、普段から顔の見える関係をつくっておくことが大切です。
難しい会話をする必要はなく、日常のあいさつやちょっとした声かけから始められます。相手の国籍や文化を必要以上に意識するのではなく、同じ地域に暮らす隣人として接することが大切です。顔見知りになっておくと、災害時にも「大丈夫ですか」「一緒に避難しましょう」と声をかけやすくなります。普段の小さなつながりが、いざというときの安心と支え合いにつながります。
自治体の防災情報を確認しておく
平常時から、自治体が発信している防災情報を確認しておくことも重要です。防災マップや避難所一覧、防災メール、防災アプリ、多言語対応の情報ページなど、災害時に役立つ情報はさまざまな形で用意されています。
外国ルーツの住民が必要な情報にたどり着けるよう、それらがどこで確認できるのかを地域住民も知っておくと安心です。避難場所や連絡先、災害時の相談窓口を一緒に確認しておくことで、いざというときの混乱を減らすことができます。
地域の国際交流イベントに参加する
外国ルーツの住民との関係づくりは、防災をテーマにした場だけで始める必要はありません。地域の国際交流イベントや文化体験会、料理教室、季節の行事などに参加することで、自然なコミュニケーションが生まれます。楽しみながら顔見知りになることで、災害時にも声をかけやすい関係を築くことができます。
防災は命を守る大切な取り組みですが、その土台には日頃の信頼関係があります。まずはイベントなど身近な交流の場に参加し、同じ地域で暮らす仲間としてつながることから始めてみましょう。
防災から多文化共生を考えてみませんか?
災害への対応は、国籍や文化、言葉の違いに関係なく、すべての住民に関わる課題です。だからこそ防災は、多文化共生を考えるきっかけにもなります。
この記事で紹介したように、「普段からあいさつを交わす」「「防災訓練に一緒に参加する」「避難所の情報を共有する」といった小さな行動の積み重ねが、災害時に助け合える関係を育てます。防災を通じて、誰もが安心して暮らせる地域づくりを始めてみませんか。
京丹波町では多文化共生に取り組んでいます

京丹波町では、地域で暮らす外国ルーツの住民と日本人住民が、互いに理解し合い、安心して暮らせる多文化共生の地域づくりを進めています。
京丹波町国際交流協会では、交流イベントや情報発信を通じて、国籍や文化の違いを越えたつながりづくりを支援しています。
防災もその大切なテーマのひとつです。災害時に助け合うためには、日頃から顔の見える関係をつくり、必要な情報を共有しておくことが欠かせません。
まずは地域のイベントや防災活動に参加し、同じ地域で暮らす住民同士として、できることからつながりを広げていきましょう。
詳しくは公式サイトをご覧ください。
まとめ
外国ルーツの住民に向けた防災では、多言語による情報発信や、やさしい日本語の活用、防災訓練への参加促進など、平常時からの備えが重要です。災害時には、避難情報が理解しづらい、避難所や避難方法がわからない、周囲に相談できる人がいないといった課題が起こることがあります。
特別な支援だけではなく、普段から地域でできることがあります。あいさつや日常会話で顔見知りになる、と声をかける、一緒に避難場所を確認する、防災訓練や地域イベントに誘うなど、日常の小さな行動が災害時の助け合いにつながります。
防災は、国籍や文化、言葉の違いに関係なく、すべての住民に関わる大切なテーマです。同じ地域で暮らす仲間としてのつながりを強めることは、災害を乗り越える大きな力となります。
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